文芸賞 受賞作品

佳作

部門: 詩

表題: 仕分けの中で

受賞者: 高岡郡梼原町 吉 門  あ や 子

少し長く生きた義母と
もう少し生きたかった連れ合いの
相次ぐ野辺の送りを終え
わたしは一人
残された物の仕分けをしている

葺き替えの茅を切る鋏
石を割る大小ののみ
やっと動かせる大玄翁
使い込んで変形した鍬や鎌
木挽きの大鋸
 お父さん ごめんなさい
 処分します

四十年前は使っていた唐棹
暑さ凌いだスゲの蓑
漬物や味噌の大小の樽
外出着も仕事着も
 ごめんなさい お母さん
 処分します

詫びつつ思い切れる物
手に取っては戻す物

こんなはずじゃなかったと
最後の言葉残した人の
地下足袋だって捨てられない
作りかけたままの諸々
外出の必需品だったバッグ
止まった腕時計
とっくにごみの部類の品々にも
在りし日の面影が浮かび
無念を思うと心が疼く

わたしは ただ後悔
仕分けの中で・・・・・・