文芸賞 すべての受賞作品

文芸奨励賞

部門: 短編小説

表題: 石鎚参り

受賞者: 土佐郡大川村 和田 和子

 日暮れの小道を茂徳(しげとく)は谷川へ下りた。 河鹿の鳴いている淵の岸で着物を脱いだ。 淵の空を塞ぐように猿滑(さるすべり) (ヒメシャラ) の大樹の枝が伸びていた。 枝には明日散る花が夜空の星のように咲いていた。 水面には昨日咲いた白い小さな花がポタポタと落ち浮かんでいる。
 茂徳は褌を外すと淵へ身を沈めた。 水無月とはいっても光の当たらない渓谷の水は冷たかった。 身を清め上がろうと岸の岩に手をかけたときだった。 その手が滑り顔まで水の中に沈んでしまった。 水面に顔をだし、 顔を拭おうとした手が、 ヌルッとして臭い。 手をかけたと思われる岩を見ると、 岩は少し動いているように見えた。 近寄ってよく見ると、 それは大きなサンショウウオだった。 水の精霊に会えるとは幸先がよい。 今回の石鎚参りは難儀が少ないかもしれないと茂徳は思った。 敗戦後八年が経ち、 穏やかな集落の日々がもどろうとしていた。
 文月朔日は石鎚山の山開きの日だ。 何日も前から獣の肉などは食べず、 谷で沐浴をし、 身を清めて山へ登る準備をする。
 茂徳は 釈善聖(しゃくぜんひじり)が歩いただろう三滝山から続く尾根の道へと這い上がった。 そこに僅かに清水が湧いていた。 茂徳は岩に口をつけて清水を飲んだ。
 水は岩の間から滴り落ち、 少しずつ集まりながら流れを作りはじめる。 石のひとつ、 流れに詰まった落ち葉の向きひとつで流れを分かち、 東へ流れたり、 南の滝へ落ちたりして違う川となる。 そんな支流をいくつも集めて大河吉野川となっていく。
 修験者が吉野川を遡り石鎚山へと続く山々を修験の場としていた。 土佐側からの尾根道は石鎚山信仰の裏道だ。 越裏門(えりもん)、 寺川の者は裏道を行くが、 少し下流の大薮集落の茂徳たちは伊予西条側から本道を登る。
 茂徳は錫杖を道の脇に突き立て、 ホラ貝を吹いた。 三滝山から来る先達が答えて吹くホラ貝の音が遠くに聞こえた。 茂徳は一休みして連れを待つことにした。 そこに札 (エフ) を背負い、 錫杖を手にした同じ集落の朝治が這い上がってきた。
「遅うなってすまざったのう」
 と言い、 息を切らせながら汗を拭った。
「いんげの、 いま来たところよ。 亀衆は先に新居浜へ下りちゅうろうけに」
「何を言いゆうぜ? 亀盛さんはもう来んで」
「おう、 そうじゃったのう。 朝やん、 そこの清水でも飲んで休みや」
 ふたりは清水を飲んで一休みした。
「三滝山からの者は?」
「まだじゃが、 おいおい来るろうじゃないか。 そろそろ行きよろう」
「そうじゃのう」
 茂徳が立ち上がりホラ貝を吹いた。 早く行く者も、 遅い者も行くところは同じなのだから、 ゆっくり行けば、 遅れた者は休まず急いで来るだろう。
「茂徳さん、 そのホラ貝は亀盛さんのかえ?」
「そうよ。 朝やんも亀衆の錫杖かえ?」
「そうよ、 だいじに使わしてもらいよる」
「亀衆は小まい男のくせに頼りになるやつじゃったのう」
 茂徳が思い出したように言った。
「おう、 それにあのときは胆が冷えたぞ」
「朝やんがわしの足を踏んだときのことか?」
「なに言いゆう。 ありゃ、 茂徳さんがわしの足を蹴つったきによ」
「わしじゃないぞ。 ……そうじゃったか? 何年も前のことじゃったがすまざったのう」
 緩やかな尾根道を楽しむかのように、 二人の会話は続いていた。

 茂徳たちは伊予側へ下りて、 石鎚神社成就社近くの宿で一泊した。 そこで同じ集落の亀盛と合流する。 宿に米五合を預け、 宿の飯や弁当の握り飯を作ってもらう。
 夜の明けぬうちから、 白装束を身にまとい先達に続いて弥山山頂の頂上社を目指す。
 権現を背負い上げて十日までは石鎚山の山頂に祀る。 「ナムマイダボ、 ナムマイダボ」 と掛け声をかけて峰の間を登る。 その後は無言のまま登っていく。 汗に濡れた衣は体温で乾き、 また汗に濡れを繰り返しながら一の鎖、 二の鎖、 三の鎖と権現を背負い上げる。
 山頂につくと、 権現に触ろうとする者が権現を抱えている先達を中心に、 集まってもみ合いになる。
「おんしの足が、 わしの足の上に乗っちゅう」
 朝治は権現に触ろうと、 前にいる者の白装束に手を掛け、 押しのけながら手をのばしていた。
「蹴つるな」
 朝治は振り返り茂徳を見た。
「朝やんこそ蹴つっつろうが?」
「わしゃ、 蹴つりゃあせんぞ」
「誰ぞ? 蹴つりゆうのは」
「誰でもええわや、 権現さんがむこうへ行くが……」
 先達の抱えた黒光りする権現が東の方の集団へとささげられたとき、 土佐の衆の小競り合いの声に、
「おう……、 止めえ……」
 先達の一人である亀盛が大声で叫んだ。 するとざわついていた動きがピタリと止まった。
 札を背負いホラ貝と錫杖を手に仁王立ちする亀盛の背後から、 朝日が昇りはじめた。
「亀盛さんに……、 後光がさしゆう……」
 小競り合いをしていた朝治が亀盛を指さした。
「朝やん、 こっちも見てみや」
 朝治は茂徳に促されて、 指を差す方向へ目をやった。 亀盛の影が皆の頭上を渡り雲海を越えて1982mの天狗岳の山頂に、 スックと立っているように見えた  

 茂徳たちは昭和十五、 六年ごろの山開きのときを思い出し、 我が欲の多さを反省した。
「あの時の亀衆の、 止めぇの一声で土佐のもんも伊予の衆も、 ピタッと静まったのには、 わしゃおじたぜよ。 小まい男のくせにねや」
 朝治はそうそうというふうに頷いて、
「ところで茂徳さんは何を願って参りゆう?」
 と尋ねた。
「そうじゃねや……」
 茂徳は首をかしげながら考えていた。
「わしは、 嫁が工面して持たしてくれた米をありがたいと思うちゅう。 それを……、 皆が腹いっぱい食える世が来ますようにじゃ」
「朝やん、 ええこと言うのう、 ほんとに。 わしゃ、 実のところ何ちゃあ考えやせん。 無心じゃ。 わしゃ年寄じゃけに、 今年は来れたが、 来年も来れるろうかみたいな、 ただそれだけよ」
 茂徳はひとり息子と畑や山仕事を一緒にするのが夢というか、 他には何も望むことはなかった。
 昔のように尾根道を何日もかけて行かず、 三ツ森峠を越えて、 新居浜から西条へ汽車に乗って、 そこから成就社へ向かった。 成就社近くの宿で泊まり、 宿屋に五合の米を渡して、 晩飯を戴き、 大広間に敷かれた長い敷布団の上に寝転がる。 同じようにして何人もが一枚の敷布団を使う。 掛布団も同じように横に長い。 皆が同じようにしていると、 それが当たり前のように思えてくる。 未明には誰とはなしに起きだして、 各々白装束に身を包み成就社の境内に集結する。
 権現を石鎚山弥山頂上社へと背負いあげる先達衆の後を集まった信者が続いて登る。
 茂徳は石鎚山に登るたびに出征した息子の無事を祈り、 どこかで生き延び還って来ることを願った。  
「ナンマイダボ、 ナンマイダボ」
 暗闇に皆の声が重なり合い、 梅雨の湿度が高い空間に松明の明かりが滲んで見えた。 皆の白装束の列が、 山へと這い上がる得体の知れない一匹の生き物に見えた。 茂徳たちもその後に続く。
 何度石鎚山へ登ったことだろう。 やはり山頂からの眺めは素晴らしい。
「茂徳さんよ、 この春、 最後の引き上げ船が舞鶴に着いたがで、 亀盛さんの娘が還ってきたの知っちゅうか?」
「ああ、 亀美子か」
「従軍看護婦じゃった。 家の者はもう死んじゅうろう言いよったがじゃと」
 朝治は握り飯を食べながら朝日を受けて煌めく瀬戸の海を眺めていた。 茂徳も背負っていた包みを降ろし握り飯を出した。
「茂徳さん……わし、 石鎚山もだいぶ登ってきたき、 札も大きいのになったけ、 神様に近うなりゆう」
 朝治は握り飯を口いっぱいに詰め込みながら、 茂徳を見てニヤッと笑った。
「朝やん、 気持ち悪いが、 へんな笑いして」
 茂徳も握り飯を口に入れた。
「茂徳さんが毎年何を祈りよったか、 わし、 わかったのよ。 無心じゃ、 無心じゃ言いよったけんど、 一つばあ欲な祈りがあってもえいがじゃないか」
「朝やん、 おんし、 ほんとに神様になったがじゃないか?」
 その時、 これまでと一転して大きな雨粒が頭に、 白装束に、 朝治の握り飯へと落ちはじめた。 皆は頂上社の狭い軒下に逃げ込みはじめたが、 茂徳たちは動く仕草もみせず、 濡れながら握り飯を食べ続けていた。
「朝やん、 わしも年を取ったし、 今回でお山へ登るのは終いにしょうと思いよる」
 朝治は茂徳の言葉が聞こえていないのか、 無心に握り飯を頬張っていた。 それが急に喉をつまらせ胸を叩きながら、
「海へ流れた吉野川の水も、 雨粒になって還って来るがじゃけ、 まだ得心したらいかん」
 と雨に濡れた茂徳の顔を覗き込み、 米粒いっぱいの口で笑った。

文芸奨励賞

部門: 短編小説

表題: スプラッシュ

受賞者: 高岡郡佐川町 片岡 裕

 轟ガ崎の沈下橋から見る川は、 この時季にしては珍しいほどの水量を湛え勢い良く流れていた。 下流に目をやると高速艇に乗って上流に向かう冒険者のような気分になる。
 川岸近くの流れが白く透けて見えるのはこの雨が降り出す前の川原だったことを物語っている。 目を凝らすと水草ではなく陸生の植物が沈んで揺れているのだと分かる。 中央の流れは筋肉質で太く、 下流に向かう意思の強さを表している。 しかし、 大きな岩や河床の形状に左右されて思うように流れることのできないジレンマが、 幾重にも重なりながら現れては消えてゆく渦となっている。
 流れの先には右にカーブした後の白く靄った急流が見えた。 その手前が一番瀬だ。 一気に駆け下がる瀬は中央の亀石で二つの流れになる。 が、 今日はあの亀石が水没して隠れ岩になっている。 要注意だ。 不用意に乗り上げてしまったらそのままスルーできるかどうか自信がない。 おそらくその先には落ち込みができているだろう。 駆け下がった後のコーナーは普段のように流れに乗せて通過できるか不安だ。 左岸の岩場に捉まったら大変だ。 流れは冬場の二倍くらいの速さに感じられる。
 二番瀬は落差が少ないので視認できる岩が幾つか残っている。 緩やかに左カーブして難関の三番瀬、 隠れ岩が連続する通称ウォッシュボードだ。 ここからでは確認できない。 ちょうど道路からも見えない位置にある。
 ここまで車で送ってくれたカヌー館の芝さんも今日は未確認とのことだった。 この水量でここからインする猛者はそうはいないだろうと言っていた。 もう一本下流の黒瀬の沈下橋からが安全だぞと念を押された。 ワイルドウォーター県代表を目指しているお前のことだから止めても無駄だなと笑っていた。
 もう一度、 一番瀬の攻略方法をイメージしながら下流を見ていると、 いきなり橋の下から真っ赤な艇が視界に飛び込んできた。 そのカヤックは全長二メートルほどの短さに見えた。
 フリースタイルのリバーカヤックだ。
 メインストリーム (本流) をしっかり捉え、 さらに加速させている。 亀石目がけてまっしぐらだ。
 思わず息を呑んだ。 亀石のちょうど真上あたりで真っ赤な艇はターンした。
 沈するぞ
 身構えた瞬間、 亀石の向こう側に沈んで見えなくなった艇がバウ (船首) から飛び出してきた。 白い飛沫の上をさらにパドリングしながらコーナーへ突っ込んでいった。
 キャッホオ~
 空耳かと思ったが、 確かに聞こえた。 あれは歓喜の雄叫びだ。
 見事にコーナーをクリアした艇は流れよりも先に進んでいた。
 足下を見ると、 流れが緩やかになった気がした。
 行こう
 橋のたもとに待たせておいた父から譲り受けた年代物のカヤック 「ダンサー」 とパドルを持つと、 水没した草の上から乗り込んだ。 今日は嫌いなスプレーカバー (水よけ) も装着する。
 メインストリームを外して流れを選び、 できるだけ上流に出た。 バウを下流に向け沈下橋を見た。 さっきの真っ赤な艇のラインが透けて見えた。 ストリームインだ。
 あっという間に予定の桁下を通過すると、 視界に水没した亀石の大きなうねりが入ってきた。 真っ赤な艇のターンする様が脳裏を掠めた。
 やめておけ
 父の声が聞こえた気がした。 いや、 自分の意思だった。 いつもとは逆に亀石の右手にラインを合わせ一気に漕いだ。 バウは亀石の落ち込みに向かって吸い寄せられた。 パドルを艇の右手に思い切り突っ込む。 ラダー (修正舵) で抜けようとしたが艇は戻らない。 諦めてスウィープし (パドルを寝かせ) た。 沈だけは避けなければ。
 浅瀬側からコーナーに入ると船底は断続的に突き上げを食らった。 平常心でメインストリームを捉まえ、 ピッチを上げた。
 危なかった。 かなりのタイムロスだ。
 振り返っている余裕はない。 二番瀬はいつも通りのライン取りで問題はないはずだ。 だが、 三番瀬が分からない。
 幅広の長い瀬だが出口は狭い。 瀬を抜けると大岩の続くホワイトウォーターだ。 最後は一メートルほどの落差を生み出す二枚岩がコース上に鎮座する。 両側とも川幅は狭く落ち込んでいる。 最もライン取りに悩まされる場所だ。 この増水でどう変化しているのか、 行ってみなければ分からない。
 そんなことを考えているうちに二番瀬は終わっていた。
 いつもならメインストリームを外さず漕ぎ切るのだが、 ウォッシュボードの後が危険だ。 岩壁側では不規則な渦が巻いているだろう。 水面下はかなり抉られていて、 巻き込まれたら脱出困難な流れが発生していることも予測できる。
 考えているうちに、 すでに三番瀬に差しかかっていた。 艇は川岸側からメインストリームに入った。 体がそう反応したのだ。
 沈だけはするな。 時間の無駄だ。 ワイルドウォーターに挑戦するならなおさらだ。
 父は沈した際、 脱出せずパドルを使って起き上がるロールを嫌った。 沈は危険だとも言った。 瀬で沈することなど考えるな。 なんとしてでも我慢しろ。 常に言われていたことだ。    
 確かに隠れ石のある瀬や岩場で沈することなど真っ平御免だ。
 一気に駆け下りる。 流れはコーナーで集約され巨大なメインストリームを生み出す。
 気持ちを切り替える間もなく目前に切り立った崖が迫ってきた。 渾身の力を込めたストロークでその巨大な流れに真っ直ぐ乗り込んだ。 バウが何度も崖側に持っていかれる。 いつもと同じ川とは思えなかった。 初めて怖いと思った。 水面の膨らみは平時を優に一メートルは超えていた。
 バウが崖に触れたかと思うや否や、 ダンサーが傾いた。 咄嗟にスウィープでリバースして立て直し、 ちょうど差しかかった屏風岩の陰に回り込んだ。 増水にもかかわらず一時避難するだけのエディ (穏やかな逆流の渦) は保たれていた。
 三番瀬を抜け切るためには最後の二枚岩をどう攻略するかだ。
 二枚岩の上は平らなので通過は容易(たやす)いが、 その先は激しい落ち込みになっているだろう。 バウが突っ込んだら必ず飲み込まれる。 かと言ってメインストリームを捉え損ねても沈だ。 二枚岩のサイドを狙って入ったら、 落ち込みに向かって強力な引き波があるだろう。
 真っ向勝負だ。 二枚岩を漕ぎ抜けよう。
 バウが突っ込まないよう、 後傾姿勢でスターン (船尾) を押し下げる。 だが、 三メートル超のダンサーをコントロールできるだろうか。
 ストリームインのタイミングを計りながら、 どの波どの流れも一つとして同じものがないことを実感した。
 一期一会を楽しもう。
 決意したことを頭は理解していなかった。 体が波に反応した。
 今だ!漕ぎ入れた瞬間、 バウを持っていかれた。
 艇はやや左にブレてバウをもたげた。 右サイドをできるだけ流れの深部に向かって漕いだ。 自分が艇から上空に向かって脱出するような錯覚を覚えた。 ブレードは流れをつかめず、 無数の飛沫を漕いで進んだ。 右に傾こうとする艇を、 腰をひねってねじふせた。  
「パドリング!」
 すぐ後ろにその声は聞こえた。 フルパワーで漕ぎ抜け瀞場に出た僕は、 やっと艇を回転させて後ろを見た。
 真っ赤な艇の彼女は凛々しく笑っていた。
「さっきはすみませんでした。 誰も来ないと思って」
 彼女は艇を止める素振りも見せなかった。
「ほんと、 危なかったわよ」
 彼女は、 二番瀬の後どこかで休んでいたのだろう。 全く気付かなかった。
 僕には冷静な判断ができなくなるほどに難しい流れだった。 真っ赤な艇のことは亀石通過の時点ですでに忘れていたのだ。
 僕を追い越してゆく彼女が振り返った。
「メンタルもスキルの一部よ。 もっとやれるわよ。 あなたなら」
「ありがとうございます」 と返すと、 彼女は瀞場で突然バウを直立させ、 その場で一回転、 二回転、 三回転した。
 それは、 僕には 「またね」 の挨拶に思えた。
 後ろから見させてもらっていいですかと心の中でつぶやくと、 僕はパドリングを始めた。  
 いつかワイルドウォーターの代表になるという思いがさらに大きくなった。
 彼女の航跡が微かに残る水面を静かに漕ぎ出すと、 辺りはまるで初めての川下りのような輝きに包まれた。

文芸賞

部門: 短編小説

表題: 

受賞者:  該当作品なし

該当作品はありませんでした。

文芸賞

部門: 詩

表題: cancer

受賞者: 高知市 田村 七里

生かさぬように殺さぬように
人間をしゃぶりつくすのが
腕のいいcancerというものだ
悪代官のように百姓の
顎を撥ねてしまっては元も子もない
努力の年月が無駄というものだ
中には性悪な奴もいて
あらゆるところに流れついて
人間を破壊しはじめる
若気の至りというところだ
勇み足はcancer道にも悖(もと)る
というのがおれたちの一致した見解だ
人を生かし自分も生きるのが
上達したcancerのあかし
甘ったるい喜びの日々も
悲しみの底なし沼も
いっしょに味わうのが
おれたちの慣わしだ
はねあがり者がいて
数ヶ月で命を奪ってしまう
抗癌剤やら放射線やら
敵さんもやたらとぶちこんでくる
挙句に正常な細胞まで虫の息で
見ていてぞっとする光景だ
おれの宿主のばあさんは九十三で
いたって元気
おれはひっそり生きてきた
欲ばらずに気づかれずに
ばあさんが目を閉じたとき
冷たい風がさあーとおれの上を流れ
そのときおれはおれの終りをしる
ばあさんが死んで数時間
闇の中で潮騒のように物音が
遠のいてゆくのをきいている
そして最後に
無音の闇が残されるばかりだ

文芸奨励賞

部門: 詩

表題: ゴリラの鼻唄

受賞者: 高知市 松岡 寿子

おいらの木の実 真っ赤だぞ
木の実が熟れると 幸せさ
朝日と共に 目を覚まし
夕日が沈めば 眠るのさ
葉っぱの寝床は 快適さ
今日も明日も 明後日も
家族一緒に 暮らすのさ

ニシゴリラの棲むアフリカを起源とする人間
好物は欲望の実
高度な知恵を持つ

人間の祖先は知恵を尽し
火と道具を使うことを知った
言葉 文字 文明社会
背中合わせの欲望の実
芽を出した罪悪
支配 搾取 侵略戦争

知恵の使い道を誤ったのは何故
欲望の実を猶も食べ続けるのは何故
減っていく熱帯雨林で今日の食の為に
知恵を尽すニシゴリラに問うがいい

ホモ・サピエンス=知恵のある唯一のもの
地球上からニシゴリラの歌声が消える時
人間はホモ・サピエンスの学名を失う
その時になって知恵を尽しても
もはや手後れなのだ
ホモ・サピエンスを冠するのは
人間が忘れてしまった鼻唄を
今日も歌っている
ニシゴリラかも知れない

文芸奨励賞

部門: 詩

表題: 種芋

受賞者: 室戸市 島村 三津夫

 母は土蔵の隠居に籠ったきり、出て来なく
なった。口をもぐもぐ言わせては、意味のよ
く分からないことを言っている。
 梅雨の間の晴れた日に、わたしは納屋の掃
除に取りかかった。数年間放っておかれた納
屋の中は、鼠の糞と蜂の巣と鼠を追いかけた
大きな蛇の抜け殻が散乱していた。納屋の床
下は芋壺になっていて、乾燥して萎れた薩摩
芋が詰まっていた。わたしはそれらのものを
裏の畠に捨てた。
 すると 母が何処からとも現れて「なにし
ゆう。来年の春には芋を植えるに蓄えちゃう
に」と言って、両の手一杯に芋を拾って、納
屋の床下へと入り込んでしまった。
 「もう百姓もようせんやろ。ほやきん、種
芋を捨てたがあよ」と言うと
「日照りが来て稲が実らんかったらどうやっ
て食うていくがあぞね。あてが種芋蓄えちゅ
うに。どうせ、あても種芋と一緒に捨てるが
あやろ」いくら説得しても母は芋壺から出よ
うとしない。
 いつしか外は土砂降りの雨になった。その
雨音を聞きつけたのか、母は抱えていた種芋
を持って、畠に出ては手で穴を掘り、干から
びた芋を一つづつ丁寧に植えていく。
 わたしは母と一緒に芋を植えた。ずぶ濡れ
になりながら植え終わると、母は「これで一
年が越せる。孫にややこが生まれても餓えは
すまいぞ」と言って笑った。
 雨に打たれて、冷えて汚れた母の体を洗う
べく風呂場に連れていき服を脱がせる。さっ
き植えた種芋のように細り萎れた母の白い体
を湯船に浸けて、わたしは藁の束でごしごし
と皺の体を洗うのだった。

文芸奨励賞

部門: 詩

表題: 目玉焼き

受賞者: 高知市 久保 亜図美

 朝ごはんは半熟の目玉焼き
黄色と白の大きな瞳がねぼけた私をみつめか
えしてくる 毎朝あなたのことばかりを白い
光の中で思い出す あの朝に窓辺でみた光景
を黄色い太陽がまるく切りとる 好奇心だけ
でさわらないで 一度ふれられてしまったと
たんに私の性質は変わってしまった それは
フライパンに落とされた卵がじゅうじゅうか
たまるように 前の状態にはもどせない は
りつく気持ちがこげついてしまう 重なりあ
った黄身と白身ははがされることなくいつも
一緒 あなたと目玉焼きになりたかった 上
に乗せるだけで豪華になる ロコモコ トー
スト スパゲティー ハンバーグはあなたも
好きだよね じゅくじゅくの気持ちが固まら
ない なにをかけて食べるか決められない
お塩 しょうゆ ソース トマトケチャップ
どんな味をつけても中身は同じ ふりまわさ
れるのはもういや 遠心力で破裂するこころ
本当に知ってほしいことはうすい殻の中に隠
れてて 一度かつんと割ってしまったら 秘
密までどろりとこぼれてしまう ちゃんと焼
かないと美味しくない でも火を通しすぎて
もだめ 絶妙な距離感が必要でどうやって接
したらいいかわからない 好きと嫌いが一緒
になってる はっきりとした両極端の気持ち
黄色と白の2色どっちつかず まるごとのみ
こんで胸が苦しくなる できあがりを待って
いてもはじまらない 意味ありげな言葉の裏
表 どこからみてもまるくみえるようで正確
な形はわからないように 名前をつけられな
い気持ちはじわじわこころにひろがっていく
今日も朝がきてまた思い出せばもやもやとざ
わめく熱い胸の中で ぽちっとおとした恋の
たまごが目玉焼きになってふくらんでいく
朝ごはんは半熟の目玉焼き




文芸奨励賞

部門: 詩

表題: 魔法使い

受賞者: 南国市 西山 幸一

魔法の絨毯にのって
世界一周旅行に
行ってみたいとは思わない
魔法を使って
過去へ未来へ行ってみたいとも
あまり思わない
魔法を使って金銀財宝を
手に入れたいとも思わない

ただ言葉の魔法使いには
なってみたい

悲しんでいる人に
寄り添う言葉をかけてみたい

病気で苦しんでいる人には
明るい話をして
いっときでも
病気を忘れてほしい
できれば
生きる希望を抱いてほしい

何をやってもうまくいき
自信満々で歩いている人には
ちょっと立ち止まって
振り返る言葉を投げてみたい

できるなら
苦しんでいる自分に
生きる希望を手にできる
そんな言葉を使いたい

魔法の絨毯はいらないけれど
言葉の魔法使いには
なってみたい

文芸奨励賞

部門: 詩

表題: 大腿骨

受賞者: 高知市 磯江 眞 知 子

体格が良いので少し時間がかかります
火葬場の職員が私たちに告げに来た

禅宗の僧侶出身の舅は
かわいい子は荒菰で巻けと
ライオン教育で我が子を鍛えた
早朝 枕を蹴って子らを起こし
百姓仕事を登校時までさせた

肥桶を担ぎこぼさぬように
一歩一歩足を踏みしめ坂を上がる
少しでも担ぐ回数を少なくしたい
多量の肥を入れる 重くて胴で担った

学業を終えると夫の兄弟たちは
早々と県外へ散って行った
優秀な兄に比べ全てに劣る夫は
親に認めてもらいたくて家に残った
家業の合間に百姓仕事も続けていた

夫の手はグローブのように太く
胴長短足で車夫のような脚だった

舅亡き後 姑や私と四人の子どもを乗せ
驀進する機関車のようにパワーに溢れ
私の知る夫は自信に満ちていた
如何にして自信を持つようになったか
柔道を始めて勝つ喜びを知ったという
得意技は背負い投げ むべなるかな

骨揚げ室に入るなり
シンメトリーになった大腿骨が目に入る
「見事なお骨です」職員は何回も言った
普通は八百度ですが千度で焼きました
骨を拾うたび白い粉が霧状に舞い上がり
皆の黒い喪服に降りかかる
特大の大腿骨が夫の人生を語る

佳作

部門: 詩

表題: 仕分けの中で

受賞者: 高岡郡梼原町 吉 門  あ や 子

少し長く生きた義母と
もう少し生きたかった連れ合いの
相次ぐ野辺の送りを終え
わたしは一人
残された物の仕分けをしている

葺き替えの茅を切る鋏
石を割る大小ののみ
やっと動かせる大玄翁
使い込んで変形した鍬や鎌
木挽きの大鋸
 お父さん ごめんなさい
 処分します

四十年前は使っていた唐棹
暑さ凌いだスゲの蓑
漬物や味噌の大小の樽
外出着も仕事着も
 ごめんなさい お母さん
 処分します

詫びつつ思い切れる物
手に取っては戻す物

こんなはずじゃなかったと
最後の言葉残した人の
地下足袋だって捨てられない
作りかけたままの諸々
外出の必需品だったバッグ
止まった腕時計
とっくにごみの部類の品々にも
在りし日の面影が浮かび
無念を思うと心が疼く

わたしは ただ後悔
仕分けの中で・・・・・・

佳作

部門: 詩

表題: 十四歳の戦争

受賞者: 高知市 濱 田  喬 子

 この薬は いよいよという時に
 自分の判断で飲みなさい
父が手渡してくれた「白い粉」
母は無言で パンツのゴム通しの中に
縫いつけてくれた
十四歳の少女は
その日から肌身離さず
「死」を身に付けていた

ソ連兵は連日扉を蹴り壊し強奪に来た
その日 少女は庭でひとりぼっちになり
防空壕に隠れて息を潜めていた
 「ダワイ」と叫ぶ声
 マンドリン銃の響き
父の声が蘇ってくる「自分の判断で・・・・・・」
震える手で白い粉を取り出す
迷った 泣けるだけ泣いた
みんなの顔が浮かんでくる
 日本語の上手なハンさんや
 泣き虫のルーシャも
戦争は津波のように
友人たちを奪い去ってしまった
もう一度 一緒に夢を語りたい
握りしめていた白い粉をポケットに入れて
死ぬなんてできないと心に決めた

ソ連兵の靴音が消えた頃
そっと 家の中に入る
父親は既に拉致されていた
泣きじゃくる少女を
白い割烹着が抱きしめてくれた

敗戦 棄民 拉致 強奪 白い粉
命がこぼれそうになった日
たったひとりで戦った
十四歳の戦争

※白い粉(青酸カリ) ダワイ(ソ連兵が強奪の時に使う言葉) マンドリン銃(マンドリンの形に似たソ連兵の銃)

佳作

部門: 詩

表題: あの日

受賞者: 高知市 大江 碧

あの日の青空を
私は決して忘れない

5歳だった私は
朝からずっと祖母の後ろを追い掛けて
お小遣いをねだっていた
しかし いつもは優しい彼女が何故か
その日は一言も口をきかず
私を無視し続けた
私はどうしても納得出来ずついには泣き出し
それでも彼女の後を追い掛けた
要求が通らない事より
虫される事が辛かった
そしてその日は泣き疲れて眠ってしまった

翌日から私は 決して駄々をこねない
聞き分けの良い子になった
私は彼女から 社会のルールを学び
彼女を尊敬して成長した

私が結婚して家を出てながい時が過ぎ
彼女が九十六歳になった頃
私は彼女に呼ばれて実家に行った
彼女は私に「あの日・・・」と言い 私は
その「あの日」がすぐに分かった
私が泣きながら眠った「あの日」を
彼女はずっと忘れていなかった
私と彼女は「あの日」で繋がっていたのだ
お互いが自分を悔い お互いを思いやり
ながい時間「あの日」で繋がっていたのだ
一ヶ月後彼女は安らかな眠りについた

「あの日」の彼女の年齢を私が「あの日」を思う時
私は5歳の自分になったり
「あの日」の祖母になったりする

佳作

部門: 詩

表題: 荒んだ犬

受賞者: 室戸市 松 原  一 成

俺は一気に山の中腹を目指し 駆け上がり
ある一つの墓の前に来て
血塗れの体を横たえる
疲れ切っていた ここは俺の塒なのだ
雲間から月が姿を現し 俺の荒んだ顔に
青白い光りを投げかけている

俺は母親を知らない
物心つく頃には船乗り上がりの
意気のいい彼の手で育てられていた
彼は妻子を亡くした所為もあってか
我が子のように慈しんでくれた
幼い俺は彼が好きだった 傍を離れず
いつも彼の後を追った

突然 彼が交通事故で死んだ
俺は途方に暮れ 彼が恋しくて
火葬場から墓場まで 人込みに紛れ付いていく
それからは当てもなく 野良犬の世界へ

苛めや喧嘩 修羅場の中で泣きながら生きた
強くなった 擰猛さや残虐さも身につけ
いつしか仲間から恐れられる様になった

今夜も仲間を引き連れ
猪を相手に 畑で死闘を繰り広げた
奴を殺して獲物にする為に

目を閉じると 彼の声が聞こえる
俺の名を呼んでいるのだ ジミー ジミー
俺は尻尾を振って駆け 彼の懐に飛び込む
頬ずりが温かい 幼い日々が・・・・・・
だが 狂暴さに魂も荒れ 傷だらけの
変わり果てた俺の姿に
彼は泣いているだろう

俺の目に涙が

文芸賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高岡郡中土佐町 川渕 湧三

「九条を守れ」の記名広告に友の名を見る思うは同じ

文芸奨励賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高岡第一小学校六年 山口 加笑

帰り道夕日が道をてらしてるいつもの道が今日はオレンジ

文芸奨励賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高岡郡中土佐町 岡村 宝美

猫滝を過ぎたあたりで切り替わる家の顔からレジ打つ顔に

文芸奨励賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 四万十市 左山 遼

「戦後」とは平和の続きいる証いついつまでも戦後であれよ

文芸奨励賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高岡郡四万十町 市川 浩子

人垣の向かうとこちら手話交はす若きふたりは何か約せり

文芸奨励賞

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高知大学教育学部付属小学校六年 福田 華子

壮大な夕焼け空に比べたら偏差値なんてちっぽけだな

佳作

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 土佐清水市 不破 陽子

逝きしより八年経たる弟の名前が消せない携帯電話

佳作

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 宿毛市 谷本 凛

殴らるる予科練兵をあわれみて厠に泣きし銃後の少年

佳作

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高知市 安岡 智子

山小屋に重(おも)き荷を負う歩荷(ぼっか)というとうとくもさびしき顔を見たりき

佳作

部門: 短 歌

表題: 

受賞者: 高知市 川村 幸子

刻まれし墓誌の人の名懇(ねんご )ろに問う孫のいて彼岸花咲く

文芸賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 四万十市 亀井 しげみ

髪洗ふ絵金屏風を見て戻り

文芸奨励賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 四万十市 石崎 雅男

苗確と根付き一村しづまりぬ

文芸奨励賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 土佐清水市 大平 岑子

浦風や浦のならひのとぼし揚げ

文芸奨励賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 喜多村 きよ子

鱪(しいら)船戻るを糶床(せりど)洗ひ待つ

文芸奨励賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 萩原 ゆの

あめんぼう冥王星にエイリアン

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 南国市 橋詰 千恵

茎のまま吊し色増す唐辛子

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 島崎 有造

病む母に付き添ふ娘桃の花

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 筒井 麻里子

かなかなの途切れて母に見送らる

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 藤岡 毬和

直会や鰡鮨に酢を効かしたる

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知大学教育学部附属中学校三年 安永 理恵

盆に集うみんなどこかが似ているね

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 四万十市 稲田 喜子

精霊舟傘差しかけて峡の径

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 和田 和子

毎食を丁寧に食べ新豆腐

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 室戸市 中山 久美子

去りがたき滝に谺の返りけり

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 長岡郡大豊町 徳弘 賀年子

母系みなお人好しなり花南瓜

文芸奨励賞

部門: 俳 句

表題: 

受賞者: 高知市 西込 とき

寒垢離のしぶき光となりにけり

佳作

部門: 俳 句

表題: 

受賞者:  川野 鷹子

漁り火は太刀魚漁か夜明け前

文芸賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 香美市 楠瀬 美香

荷を下ろし母は寓話の森へ行く

文芸奨励賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 南国市 土居 志保子

人間のニオイが汚染されていく

文芸奨励賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高岡郡日高村 佐野 佳葉子

和紙に墨ポツンと落ちた私です

文芸奨励賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高知市 濱田 久子

それからをナンジャモンジャの木に問うて

文芸奨励賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高知市 川添 郁子

八月を噛んだら痛む親不知

文芸奨励賞

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 土佐市立高岡第一小学校六年 岩村 委成美

いい朝だ地球もあくび春が来る

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 吾川郡いの町 岡村 見美子

天敵の横で仮眠をとっておく

佳作

部門: 川 柳

表題: 高知市

受賞者:  沢村 洋子

頻繁に避難袋と話する

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高知市 古田 彩香

推理小説ななめに走る黒揚羽

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 宿毛市 江口 桂子

夜の雨なにか育っているらしい

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高知市 冨士田 三郎

騙されて青信号が渡れない

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 須崎市 さとみ みさ

合鍵とカーペンターズは置いて行く

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 高知市 千里 日月

お終いのボタンで気づく掛け違い

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 須崎市立浦ノ内小学校二年 里見 仁史

ちょうちょうがでんしんばしらにさいている

佳作

部門: 川 柳

表題: 

受賞者: 土佐市立高岡第一小学校六年 川澤 芽來

風鈴を息で鳴らしてみたくなる