文芸奨励賞
部門: 詩
表題: ゴリラの鼻唄
受賞者: 高知市 松岡 寿子
おいらの木の実 真っ赤だぞ
木の実が熟れると 幸せさ
朝日と共に 目を覚まし
夕日が沈めば 眠るのさ
葉っぱの寝床は 快適さ
今日も明日も 明後日も
家族一緒に 暮らすのさ
ニシゴリラの棲むアフリカを起源とする人間
好物は欲望の実
高度な知恵を持つ
人間の祖先は知恵を尽し
火と道具を使うことを知った
言葉 文字 文明社会
背中合わせの欲望の実
芽を出した罪悪
支配 搾取 侵略戦争
知恵の使い道を誤ったのは何故
欲望の実を猶も食べ続けるのは何故
減っていく熱帯雨林で今日の食の為に
知恵を尽すニシゴリラに問うがいい
ホモ・サピエンス=知恵のある唯一のもの
地球上からニシゴリラの歌声が消える時
人間はホモ・サピエンスの学名を失う
その時になって知恵を尽しても
もはや手後れなのだ
ホモ・サピエンスを冠するのは
人間が忘れてしまった鼻唄を
今日も歌っている
ニシゴリラかも知れない